マリア・テレジア銀貨の思い出

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今日の朝からマダムはバスでプラハ二泊三日の旅に向かった。
私はエニーと留守番だ。

昨日はその準備で、マダムは街の中心部にある、レートが良いと言われている小さな銀行に、幾許かのユーロをチェコの通貨に換えてきたのだが、そのついでに、マダムはそこに置いてあったこんなパンフレットを持って帰ってきたのだった。
オーストリア造幣局のパンフレットで、有名な「フィルハーモニー金貨」などが載っている。
私も何の気なしにパラパラとめくっては眺めていたが、一つだけとても懐かしいものが載っていた。
マリア・テレジア銀貨である。
小学校高学年の頃、私は古銭や外国のコインを集めていた。
と言っても子供のお小遣いで買える程度の、寛永通宝とか天保通宝、いづれも当時五十円から二百円程度で売られていた安価なものばかり集めては一人悦に入っていたのだが、いつ頃か詳しいことはすっかり忘れてしまったが、ある日どこかのデパートの古銭コーナーで、私はこのマリア・テレジア銀貨を見つけたのだ。
大きくて立派な割には、そんなに高価では無いように思ったので、確か二千円ぐらいだったろうか。
何も知らない子供だった私は、きっと自分が大人になった頃は随分値上がりしているに違い無いと希望に燃えて、まるで清水の舞台から飛び降りるような気持ちで買ったのを覚えている。

その後10年ぐらい経ったある日、すっかり古銭に興味がなくなっていた私は、とあるデパートの古銭コーナを素通りしながら、一瞬、眼の端でこのコインを見つけ「あっ!」と思いショウケースに近づいた。
一体いくらになっているのだろう?ワクワクしながら目を凝らして値段を見てみたら「2,000円」であった。
落胆した私はその後この銀貨を失くしてしまい、現在は手元にない。



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