暗い話

DSCN4344.jpg

今回は、このブログのいつものトーンとは違う、少々暗い話を書こうと思う。
とは言っても、私達家族に災難が降り掛かった訳ではないので、その点ではどうぞご安心を。
しかし、それでも長くて嫌な事は読みたくないと言う人は、どうぞ今回はスルーして下さい。
DSCN4343.jpg向って左に我が家の入口のドア、右にはNさん宅がある

事の起こりは三日前だった。
お昼前頃に不意の来客が有り、ドアを開けてみると、私達よりも長くこの建物の階下に住んでいる、顔なじみの元気なスポーツおばさんと、もう一人、見ず知らずの背の高い中年女性が立っていた。
「最近Nさんを見かけましたか?」スポーツおばさんが私に尋ねた。
Nさんは我が家の廊下を隔てたお向かいに住む老人だ。
「いいえ、長い間お見かけしてませんね、ブルゲンランドにもう一つ家があるそうで、そちらによく行かれていると聞いていますが・・・」
「そうですか・・・どうも有り難う。」そういってドアは閉められたが、その二時間ぐらい後に、今度はその背の高い女性と若い警察官が来て我が家をノックした。
警官曰く「Nさんについて何かご存知ありませんか?」「いいえ」
「どれぐらい見かけませんか?」「よく覚えていませんが、3ヶ月ぐらいでしょうか。」
「あっ、比較的最近、中から微かに音楽が流れているのを聞いた憶えがありますが・・・」
私はこのように答えた。
「そうですか、どうも有り難う。」我が家のドアは再び閉じられ、私はアトリエに帰り制作に戻った。

その後しばらくして大勢の人の声が聞こえ、さらに鍵が掛けてあるドアを無理矢理こじ開けようとしていると思しき大きなドンドンガンガンといった音が聞こえ出した。
「だれも居ないからと言ってあんな事をしてもいいのだろうか・・・イヤ待てよ、ひょっとしたら・・・」
娘が大学から帰って来た時もまだやっていて、私達は夕飯を食べながらこの事について色々と話をした。
そして夜、静かになった頃ドアを開けてみると、Nさん宅のドアはきっちりと閉じられていたが廊下には沢山の木屑が落ちていた。

翌日、午前11時頃、夕食の食材を買いに外出すべく階段を下りて行くと、途中で階段を上って行く昨日の警官、それにオレンジ色のビニール製の防護服のような上っ張りを着て、小さな金属タンクと長いノズルの着いた高圧洗浄機のような物を肩にかけた中年男性、その後ろに何かしら重そうな物の入ったプラスチックの籠を両手で持った中年男性とすれ違った。
「これはますます怪しい・・・」そう思いつつも、私は一時間ほどで買い物を済ませ、家路を歩いていると、先ほど建物の中ですれ違った上っ張りの男性とまたすれ違い、籠の男性ともまたすれ違った。
Nさん宅での仕事を終えたのだろう、二人とも僅かに沈鬱な表情をしているのが印象的であった。
「これはほぼ間違いないな・・・」

エレベーターで最上階に上がり、我が家のドアの鍵を開けようと歩いていくと、強烈な消毒薬の匂いが鼻を突き、私の背筋を一瞬悪寒が走った。
Nさん宅のドアには小さな貼紙がしてあった。「注意!保健衛生上の事由により封鎖」意訳するとこういう事が書いてあり、それを見た私は大急ぎで自宅の鍵を開けまた大急ぎで閉めた。
もう間違いない、Nさんは自宅でいつの間にか亡くなっておられたのだ。
DSCN4331.jpg
お向かいに住んでいながらほとんどお付き合いも無く、
年齢も定かではないがおそらく七十は超えておられたであろう。
非常に静かな方で、いつも微かに怯えているような表情であった。

当然ながら私達は全く気がつかなかったが一体いつ頃お亡くなりになったのだろうか?
私達はどれぐらいの日数を、Nさんの亡骸と共に暮らしていたのだろうか?



暗い話でごめんなさい!
でもマダムのいないさびしいkenwan家の二人に
どうぞ励ましのクリックを!




にほんブログ村 海外生活ブログ オーストリア情報へ

にほんブログ村 美術ブログ 油彩画へ
スポンサーサイト