今日の一枚13) 二世広重 「赤坂桐畑雨中夕けい」

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国立国会図書館所蔵 二世広重 名所江戸百景の内 「赤坂桐畑雨中夕けい」

昨日の記事で紹介した本を、私はずいぶん誉めそやした訳だけど、たった一つ残念なことがある。
それは上に掲載した図版が載っていないことであった。
明らかに二世広重の作と銘しているこの作品は、ウィキペディアの「名所江戸百景」によると、通例としてこのシリーズに含めない事になっているので、致し方ないといえばそうである。
しかし、とは言えこの作品は、私の大好きな一枚なのだ。
手前の道を傘をさして歩む武士達やボテフリ、それに近景の家屋や木立ははっきりと見えているが、その向こうの、坂道を歩く人々や木立は雨にけぶる中ぼんやりと見えている様子が実に見事に描かれていて、まるで雨中の湿った空気まで感じられるような、素晴らしい作品ではないか。

遠景のぼやけて見える、傘をさして坂道を行く人影などは実にリアルに感じられるのだけれど、よく見ると全く簡単な一筆二筆のタッチ だけで描かれているのだ。
こういうところに二世広重の、師匠に劣らぬ力量を私は感じてしまう。

さらに言えば、私はこの「二世広重」という人物に、ある思い入れがある。

と言うのも、まず読者諸氏は「一ノ関圭」という漫画家をご存知だろうか?
ご存知ない方は、この名前でググるか、ウィキペディアで検索していただきたい。
デビュー当初から圧倒的な画力と骨太のストーリーを感じさせた人で、学生時代の私は貪るようにこの人の漫画を読み漁ったものだった。

この人が1981年にビッグコミックに発表した「茶箱広重」という作品がある。
これは初代広重が亡くなった後の、二代目広重やそのまわりの人々の人間模様を描いた漫画である。

今でも覚えているが、ここに描かれた「二世広重」こと森田鎮平は、主人公にもかかわらず、話す言葉はどもり気味で、絵だけが取り柄の実に暗い人物として描かれていて、それがまた、いかにもリアリティーがあるのだ。
だからこの漫画その物も、どちらかというと暗い印象だったのだが、かえってそれゆえに実に重厚な人間ドラマを感じさせる名作であった。

あの漫画を読んでから15年経ち、一ノ関圭という名前も忘れていた頃に、件の画集で「二世広重」の作に初めて出会っった私は、かって読んだあの漫画もありありと思い出してしまった。
そんな私にとって「二世広重」とは、まさにこの一ノ関圭の「茶箱広重」の森田鎮平なのである。




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